AWS Certificate Manager (ACM) は、AWSが提供するマネージド型の証明書管理サービスです。ACMを利用することで、SSL/TLS証明書のプロビジョニング、管理、デプロイを簡単に行うことができ、ウェブサイトやアプリケーションのセキュリティを強化します。
AWS Certificate Managerの主な特徴
- 無料のSSL/TLS証明書
ACMを利用すると、AWSが発行するSSL/TLS証明書を無料で取得できます。これにより、ウェブサイトやアプリケーションにHTTPSを簡単に導入でき、データ通信の暗号化を実現します。また、証明書の自動更新もサポートしており、手動での更新作業が不要です。 - シームレスな統合
ACMで発行した証明書は、Amazon CloudFront、Elastic Load Balancing (ELB)、Amazon API GatewayなどのAWSサービスとシームレスに統合できます。これにより、証明書のデプロイが簡単に行え、セキュリティ設定の複雑さを軽減できます。 - 自動更新
ACMは証明書の有効期限が近づくと、自動的に更新を行います。これにより、有効期限切れによるサービス停止やセキュリティリスクを防ぐことができます。更新の際には手動での介入が不要なため、運用の負荷も大幅に軽減されます。 - 複数ドメインとサブドメインのサポート
ACMは、単一の証明書で複数のドメインやサブドメインをカバーするワイルドカード証明書をサポートしています。これにより、管理の手間を減らし、ドメインやサブドメインが増えた場合でも柔軟に対応できます。
公式リソース
AWS Certificate Managerの開発時の留意点
ACMを利用する際には、いくつかの制約事項や注意点があります。これらを理解しておくことで、効率的かつ安全に証明書を管理でき、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。
- ACMで発行した証明書の利用範囲
ACMで発行されたSSL/TLS証明書は、AWSの特定のサービス(CloudFront、ELB、API Gateway、AWS Elastic Beanstalkなど)でのみ使用可能です。オンプレミスのサーバーや他のクラウドプロバイダーで利用することはできないため、他の環境での利用を検討している場合は、別途証明書を購入する必要があります。 - ワイルドカード証明書の制約
ACMはワイルドカード証明書をサポートしていますが、ワイルドカードは1レベルのサブドメインにしか適用できません。たとえば、*.example.com
はカバーできますが、*.*.example.com
のような複数レベルのワイルドカードには対応していません。 - ドメイン所有権の検証
証明書を発行する際、ACMはドメインの所有権を確認するためにDNSまたはメールを使用します。DNS検証を選択すると、CNAMEレコードを設定する必要があります。ドメインのDNS設定にアクセスできることを確認し、所有権の確認がスムーズに行えるよう準備が必要です。 - 証明書の管理と運用
ACMは証明書の発行と自動更新を管理しますが、発行された証明書が正しく適用されていることを確認する必要があります。特に、CloudFrontやELBに証明書を適用する際は、証明書が正しいドメインに関連付けられていることを確認しましょう。 - 複数リージョンでの証明書管理
ACMの証明書は、発行されたリージョンでのみ有効です。マルチリージョン環境でサービスを提供している場合、各リージョンで個別に証明書を発行する必要があります。これにより、リージョンごとに証明書の管理が複雑になることがあります。
公式リソース
※サービスクォータとは、AWSアカウントのリソースやアクション、アイテムの最大値の制限のことです
まとめ
AWS Certificate Managerは、AWS環境でのSSL/TLS証明書の管理を大幅に簡素化し、セキュリティ強化と運用負荷の軽減を実現する強力なツールです。ただし、開発時には、利用範囲やワイルドカード証明書の制約、ドメイン所有権の検証手順、リージョンごとの証明書管理など、いくつかの注意点を理解しておく必要があります。
AWS公式リソースを参考に、ACMを効果的に活用して、安全でスケーラブルなウェブアプリケーションを構築しましょう。